2015/02/24

サブスリーを達成するためのポイント

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サブスリー達成者は市民ランナーのおよそ3%。これを目標にトレーニングを行っている市民ランナーさんは多いのですが、なかなか達成できないのが現状。それだけに、達成した時はいいおっさんが感極まって涙して喜んでしまうほどになるのですが(私も泣いてしまった)、サブスリーを短期に要領よく達成するためには、いくつかのポイントがあると思います。私の極浅いマラソン経験からすると、そのポイントは、

・キロ4分15秒ペースの走力では全然足りない
・30kmを2時間5分以内で走れるようにする
・レースの目標はサブスリーではなく自己ベスト更新を狙う
・トレーニングではペース走を繰り返す。ハーフのレースにも出る
・心拍計の利用は効果的
・レベルに見合ったトレーニング量


・キロ4分15秒ペースの走力では全然足りない

フルマラソンをサブスリーで走るには、1kmを4分15秒ペースで走ればいいため、この数値に執着してしまいがちになるのですが、このペースはギリギリセーフのペース。
実際のレースでは、スタート時の混雑、向かい風、坂道、給水、疲労の周期、25km以降など、いくつかの地点で必ず失速します。そのため、キロ4分15秒よりも速く走る必要があります。特に、30kmの壁と言われるように、25kmを過ぎたあたりから走りは、確実に苦しくなります。
イーブンペースで走ることが理想ではありますが、実際のランナーさんのラップタイムを見ると、後半はほとんどの方が失速しており、日本を代表するエリートランナーですら、35km以降は失速しています。イーブンで走って後半にペースアップできるのは、アフリカのトップランナーくらいです。そのため、後半の失速分を見越した貯金ができるくらいの余力がないとサブスリー達成は厳しいのですよね。
もちろん、前半に飛ばすと後半は持たないので、前半は4分10秒あたりにキープして走る必要があるのですが、そのペースが30kmあたりまでは余裕綽々で走れないといけないわけです。タイム的にはイーブンを目指すのですが、同じペースでも前半は心拍数が150bpm以下、後半が160bpm以上になり、苦しさの面では完全にビルドアップとなります。
前半で4分15秒ペースが速く感じたり、心拍数が上がってしまうようでは、走力が完全に不足しています。


・30kmを2時間5分以内で走れるようにする

となると、トレーニングで30kmのロング走を4分15秒ペースで走れたとしても、これでは全然足りません。小出監督の著書ではサブスリーを目標としたランナーの場合、20~30kmを4分~4分5秒ペースで走れるようになることが目標となっています。30kmを4分5秒ペースだと、2時間2分30秒になります。かなり速いです。現在サブスリーを目標にしている方は、このタイムで走れない方が多いかと思います。

私は、6月と9月のまだ暑い時期に、30kmのレースに出てみたのですが、2時間4分6秒と、2時間3分44秒でした。1月の冬場にiPhoneのGPSを使ってタイムトライアルを行ったときは、2時間0分41秒でした。この年のフルのレースは何とかサブスリーを達成できています。このくらいのペースで走れると、当然4分15秒ペースが楽に感じるようになり、心拍数も下がります。
サブスリーの4分15秒ペースを目安にしてトレーニングをしているようでは強度が低すぎるのですね。最低ペースが4分15秒とし、これより更に速いペースを維持できるトレーニングを行わないと、サブスリー達成は難しい思われます。目標がサブスリーなら、2時間55分を切る強度のトレーニングをするくらいでちょうどいいかもしれません。


・レースの目標はサブスリーではなく自己ベスト更新を狙う

サブスリーが目標のランナーさんは、フルのレースでは当然サブスリーを狙うのですが、これがクリアできるかできないかは微妙。しかし、自己ベスト更新なら、達成できる可能性は高いですよね。
自分の実力が、まだサブスリーに達していないランナーさんが、最初からサブスリーペースで走ったところで、後半に失速するのは当然で、後半に失速すると、どうあがいても絶対取り返しがつかず、ペースは落ちる一方になるため、結局PB更新にも程遠い失敗レースに終わってしまいます。
しかし、最初からPB更新狙いのペースで走れば、前半は過去と同様の頑張りで済むし、トレーニングで走力が上がっているのなら、後半にペースアップできます。多分、自己ベストを出した時のラップタイムは、後半失速している場合が多いので、イーブンペースで走り続けるだけで、自己ベストを更新できる計算になります。そのため、後半にペースを上げられるほどの余裕があるのなら、サブスリー達成の可能性も高まるのですね。
大幅な失敗レースは挫折感や徒労感が大きく、やる気が一気に削がれるため、できるだけこれを回避した方が、今後のトレーニングにもプラスになります。
そのため、自己ベスト狙いのペースで前半を走り、お楽しみは後半にするという計画が、功を奏するように思います。
ということになると、サブスリーを現実的な目標にできるランナーさんというのは、現時点での自己ベストが3時間5分あたりでないと厳しいかと思います。


・トレーニングではペース走を繰り返す。ハーフのレースにも出る

私のポイント練習の要は10~15kmのペース走(LT走)でした。ターゲットペースはハーフのレースペースだったのですが、トレーニングを行っていた走り込み期は、まだ暑い時期なのでそこまで速くは走れず、実際はキロ4分程度。フルが3時間程度のランナーさんは、気温が高い時期でのこのペースは、全力に近いものがあります。
このトレーニングを定期的に繰り返すのですが、更に速いペースで走れるようになることを目標とせず、余裕度を増やす(心拍数を少しでも下げられるようにする)ことを目標にしました。
フルのペースよりもはるかに速いペースを余裕を持って走れる身体能力があれば、フルの目標ペースは楽チンになります。そのためのトレーニングです。
そして、ハーフのレースもできるだけ多く参戦し、自己ベスト更新が目的だけでなく、心拍数が高く苦しい状態で長時間走れるようになることのトレーニングも兼ねて走っていました。ハーフに出たあとは、確実に走力が上がりました。普段一人でトレーニングをしている方は、特に効果が高いと思います。
スピード強化のトレーニングはインターバル走もありますが、ペースコントロールが難しく、本数毎にスプリント区間が速くなったり遅くなったりするし、インターバル区間も休みがちになったりするため、私の場合は、一定の苦しさをキープしながら走るLT走の方が、走りやすくて追い込みやすかったです。


・心拍計の利用は効果的

上記の中でも出てきたように、自分の負荷の状態や、上達の度合いを確認するには、心拍計は必須だと思います。
今日のポイント練習は、体感的に非常に苦しいと感じたにも関わらず、思ったほどペースは上がらずガッカリすることがあるのですが、心拍数をチェックしてみると、今回のトレーニングの方が高くなっており、体には十分ハードなトレーニングだったということがわかります。
逆に、ハイペースで走れた割には楽だったという、調子のいいときもありますが、そんなときはもっとペースを上げて追い込んだ方がトレーニング効果は高いです。

同じトレーニングメニューでも、その日の体調や気温、湿度などの影響により、体に感じる負荷は変わってしまうのですが、タイムやペースを基準にしてしまうと、今回のトレーニングは体に対してどの程度ハードだったのかが、何となくでしかわからないのですよね。
しかし、心拍数を目安にトレーニングを行えば、どんな季節であろうと、体調が良かろうが悪かろうが、確実に同一の負荷をかけたトレーニングを行うことができます。
ハードなポイント練習では、いかに負荷をかけることができたか?しっかり耐えることができたか?が重要であり、ジョグでは、無理せずゆっくりリラックスして走れたか?疲労が溜まっていなかったか?を確認することが重要。ポイント練習では自分のレース時の心拍数を上回る数値を目指して走り、ジョグは無駄に心拍を上げないようにして走る。
そういった細かな負荷コントロールができるのがハートレートモニターであり、タイムを目安にしたり、自分の感覚的な判断を目安にするよりもはるかに正確です。
心拍計を利用するときのポイントは、レースでもポイント練習でもジョグでも、あるいは、自転車やトレッドミルやクロカンマシンなどでも、必ず心拍計を取り付けて運動時にチェックすることと、そのデータを保存しておくことですね。
また、心拍計を使う練習として、ペースタイムではなく、指定した心拍数を維持しながら走り続ける心拍ペース走も効果的でした。心拍数をこれ以上上げずに、いかに楽に走ることができるか?その走法を試行錯誤しながら実践することができます。

心拍計を利用しなくても、レベルアップはできますが、今日のトレーニングを「たいへんよくできました」と公平な評価をしてくれるのが心拍計。モチベーションアップにもつながるため、利用することをオススメします。


・レベルに見合ったトレーニング量

トレーニング量ですが、多い場合と少ない場合の両方を試したことがあるのですが、



多くても少なくてもダメなようで、バランスがいいメニューをこなしている月は、月間走行距離が300~350kmあたり。
トレーニングは多ければ多いほうがいいような気がしますが、自分のレベルに対してトレーニング量が多いと、ペースの遅いロング走や、つなぎのジョグが増えるばかりでなく、休養日が減ってしまうので、疲労が芯から抜けずに追い込んだポイント練習が少なくなってしまい、結果的にはダラダラしたメニューばかりになってしまうのですね。
そして、昼の睡魔がひどくなったり、だるい日が増えたりしてしまい、仕事や私生活にも影響をきたします。
極端にトレーニング量が多い実業団の選手は、月間距離が1000kmにも達するらしいのですが、一日の生活内容が一般市民とはかけ離れており、例えば天満屋女子陸上部の場合、

朝5時起床
6時朝練12km50分
8時朝食
9時出社
昼過ぎ帰宅
15時練習(インターバル、ロング、ジョグを日毎にローテーション)
18時夕食
食後各自筋トレ
22時には就寝

金哲彦氏が紹介していた実業団ランナーの一日は、

5時半起床、ストレッチ
6時朝練ジョグ90分5'00/km
9時出社
12時退社、食事、自由時間
15時午後練ペース走20km3'40/km
17時練習終了、食事、入浴
21時練習日誌筆記
21時半就寝

このメニューなら、トレーニング時間が多いだけでなく、仕事は楽だしプライベート時間や就寝時間はタップリあるし、食事も栄養管理されたメニューなので、体の回復も早い。月間距離が異常に増えても当たり前ですよね。

練習の内容を振り返らずに、単純に走った合計距離だけで判断してしまうと、「今月は頑張った!来月はもっと増やすぞ!」といった感じで、練習のための練習という無意味なスパイラルに陥ってしまい、レベルアップできずに走歴と年齢が増えただけという不甲斐ない結果に終わってしまいます。
ポイント練習、ジョグ、休養をバランスよくローテーションさせて、メリハリのあるメニューをこなすようにすれば、自動的に自分の目標レベルに見合った走行距離になるはず。
同レベルのランナーさんよりもはるかに多くの距離を走っているにも関わらず、レース結果が同等ということは、距離が多く強度が低いメニューを繰り返し、時間と労力を無駄に浪費してしまっているか、マラソン上達の素質がないかのどちらかになると思います。


・その他

フルのレースでは、ラスト1週間の過ごし方も重要ですね。頑張りすぎず、抜きすぎず、適度なトレーニングを継続しながらテーパリングをしていき、レース当日は疲労がわずかに残っているくらいのときが、好タイムが出るようです。一般的に調整週のポイントは、ペースを下げずに距離を減らすと言われています。
私のフルのレース全8戦中、サブスリーをクリアできたのは4戦。
その4つのレースの最終週のメニューはこうなっていました。

初回サブスリー達成時の1週間

月 5km 4'45/km、筋トレ
火 休養
水 18km 4'48/km
木 13km 5'32/km
金 休養
土 7km 4'59/km
日 レース2時間58分14秒

2回目

月 10km 3'52/km
火 休足、筋トレ
水 9.8km 6'14/km
木 徒歩6km
金 休養
土 徒歩7km
日 レース2時間55分2秒

3回目

月 20km 4'18/km
火 休足、筋トレ
水 休養(雨)
木 10km 5'02/km
金 休養
土 休養(雨)
日 レース2時間55分58秒

4回目(2週連続フル)

月 15km 5'13/km
火 休足、筋トレ
水 10km 5'00/km
木 8km 5'50/km
金 休養
土 5km 4'32/km
日 レース2時間52分49秒(PB)

共通点は火曜と金曜を休みとし、月曜か火曜は筋トレを行っています。筋トレは、筋肉痛が起こるほどのレベルで行いました。
筋トレを火曜日あたりに終わらせておけば、レース日にまで疲労が残ることはないし、筋肉の回復に栄養が取られるためか、体重、体脂肪の増加に歯止めがかけられるようです。
また、筋トレ2日後の木曜日は、筋肉痛のため身体が非常に重くなるので、無理なランニングメニューが行えなくなります。これがタイミング的にちょうどよく、筋トレと木曜の軽めのメニューの疲労を、完全休養の金曜日にしっかり抜くことができます。
しかし、レース最終週でもそこそこの距離やペースを走るようにしているので、完全には疲労は抜けずにレース当日も体はやや重め。このパターンで好結果が出ています。
この週で休みすぎてしまうと、体重が増えてしまったり、生活パターンが狂って眠りが浅くなってしまったり、元気がありあまってレース前半に飛ばしすぎてしまったりなど、いいことはないようです。

ちなみに筋トレは、マッチョな体型を目指すものではなく、キック力やフォームの安定、肩こりや腰痛などの持病を防ぐもので、重量的な負荷を減らして回数を増やす筋持久力強化目的の筋トレを行っています。

また、トレーニングメニューの一つであるヤッソ800は、走力アップだけでなく、フルのタイム予想をかなり正確に知ることができるので、トラックを利用できるのなら、これで現在のレベルを確認するといいかと思います。
スプリント800m+インターバル200mを10本行い、スプリントの平均タイムが3分なら、フルは3時間。平均タイムが2分55秒なら、フルは2時間55分となります。
インターバル区間は、スプリント区間と同じタイムで走って心拍を下げます。
自己ベストが出て疲労が完全に抜けた翌月に、ヤッソ800を行ったところ、

1本目 2'48"01
2本目 2'52"67
3本目 2'53"02
4本目 2'51"52
5本目 2'51"82
6本目 2'51"23
7本目 2'52"45
8本目 2'52"24
9本目 2'54"55
10本目 2'51"20
平均 2'51"87

という結果になり、自己ベストのタイムにかなり近いペースになりました。
ヤッソを頑張ればフルが速くなるわけではなく、ロング走もしっかり行わないとダメなのですが、スピード強化と現在の実力を確認することが目的なら、とても役に立つトレーニングとなるようです。


トレーニング方法は人それぞれで、これが正解というものはないのですが、自分のメニューが正しかったかどうかは、レース結果が教えてくれます。そして、結果が出なかったとしても、過去のメニューを大幅に変更はせずに、悪い箇所を一つだけ見つけて改善するくらいで済む場合が多いです。私の場合は、月間走行距離を目標にしないことと、時間と労力を消費する割にはトレーニング効果が低いLSDをなくすことでした。
それと、他のランナーさんのトレーニング内容をチェックし、どこがいいのか、どこが悪いのかを自分で評価するということも効果的に思います。それはマラソンの書籍も同じ。この著者のこの部分は実践すべきだが、ここはこういう理由があるから納得できない。実際に自分も試してみたが、やはりその考えは正しかった。
そういったダメ出し力は、自分のトレーニングの反省と精度向上にも活かすことができると思います。

いかに効率良くトレーニングを行い、好結果を残せるか。この能力が高ければ、今後の加齢によるパフォーマンスダウンにも対応できるはず。ひたすらがむしゃらに走ってトレーニング量を増やしてしまうやり方は若い人は可能ですが、中年ランナーの場合は、質より量の方法では趣味としてのマラソンを末永く継続することが厳しくなってしまいます。そういった意味でも、自分なりに効率良くトレーニングを行う方法を試行錯誤しながら完成度を高め、その結果をレースで確認して、大喜びでゴールできるようになることが理想だと思います。

レベルアップを目指して、お互い頑張りましょう (^O^)/