2014/06/21

マラソンの参考書

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以前、マラソントレーニングのオススメ本を紹介したのですが、その後、Amazonに数冊あったこの古本が速攻で売れてしまい、今は4980円というボッタクリ価格の中古本が売られているのみ。読んでみたい方は、図書館にあるかもしれないのでチェックしてみてください。図書館の本の検索と予約は、このアプリが便利です。

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今回再び、オススメ本を見つけました。単行本ではなく大判のムックで、2005年5月出版のやや古い本。今は中古本しか出回っておらず、私は図書館で借りたのですが、あまりにも内容がいいので、中古本も注文しました。


前回のマラソントレーニングの本が基本を抑えた教科書とするなら、写真を豊富に使ったこの本は応用のための参考書といった感じ。
有名なランナーのインタビューと、全盛期のカラー写真、日本のマラソントレーニングの歴史、金哲彦氏のマラソントレーニングメニューという内容となっているのですが、インタビューの質問が良く、例えば瀬古利彦さんへの質問は、

・具体的に、初マラソンに向けてどんな練習をされていたのですか。
・練習以外で取り組んでいたことは。
・サブテンを目指していた80年以降は、どんなマラソン練習をしていたのですか。
・レース前の調整とはどのようなものですか。
・瀬古さんの現役時代の調整で、失敗から成功へと導いた具体例を教えて下さい。
・自分の体をうまくコントロールし、調整力をばっちり身につけるにはどうしたらいいのでしょうか。
・フォームで気をつけていたのはどんな点ですか。
・苦しさを紛らわすフォームはありますか。
・高校時代まで中距離選手だった瀬古さんが、大学に入って、まず箱根駅伝の距離、20kmを走り切るスタミナをつけるために行ったことは。
・スタミナの配分は、どのようにすればいいと考えていましたか。
など。

これらの質問に対して、瀬古さんがかなり具体的に答えています。
また、中山竹通選手のページでは、究極のインターバルトレーニングを紹介しており、1万mを27分30秒で走ることを目的としていて、

インターバルトレーニングを、僕は、こんなふうに考えていました。27分30秒で走り切る1万メートルを1本と考え、それをぶつ切りに10個に切ってみると、1000mが10個となり、微塵切りに25個に切ってみると、400mが25個と考えることができます。レースがイーブンペースで進むことはありませんが、イーブンペースで計算すると、1000mを2分45秒×10個、400mならば66秒×25個。
これで1万メートルを27分30秒で走る計算になります。
まずは、微塵切りをこなせるようにし、次にぶつ切りでも耐えられるようになっていく。そして、最後に1本になる、という考え方です。

インターバルトレーニングには、リカバリーといわれるつなぎの部分があります。そこを、苦しさから逃れる距離だと思っている方があるかもしれませんが、そこのタイムこそ重要視していました。
最初は、微塵切りショートインターバルから攻めるわけですが、400mを66秒×25本のトレーニングをするときに、決して66秒を超えてはいけないし、リカバリーは100mを20秒以内でないと1万メートルを27分30秒では走れません。微塵切りのインターバルも線で考えていたからです。

400mを64秒で走り、100mのリカバリーを19秒で走ると500mの通過は1分23秒になり、そして、2本目の400mを64秒で走り、100mを19秒でカバーすると1000mの通過が2分46秒ということになります。
そしてまた、400mを64秒で走って100mを19秒で走って、という足し算の連続で、1万mを走り切るタイムが27分30秒に肉薄していく練習を積みました。

この先も説明が続くのですが、タイムを自分のレベルに換算することで、自分のトレーニングに取り入れることが可能です。
マラソンだけを目指していた中山選手は、トラックから始めた瀬古選手とは違って、「スピードがない」のが弱点だったそうで、それを克服するために、このインターバルトレーニングに取り組んだそうです。
こんな感じで、

瀬古利彦
中山竹通
野口みずき
高橋尚子
宗兄弟
有森裕子
君原健二
宇佐美彰朗
増田明美
谷口浩美
森下広一
山下佐知子
川嶋伸次

の各選手が、トレーニングやレースに関して事細かに語っているという、非常に濃い内容。
日本マラソントレーニングヒストリーというコーナーも充実しており、津田晴一郎、鈴木憲雄、黒田義久、円谷幸吉、犬伏孝行、油谷繁選手の当時のトレーニングメニューが表で紹介されています。例えば、円谷選手の1964年8月盛夏の練習の場合、

1日 5000m 14'42"2
2日 休
3日 5000m(16'38)+4000m(12'54)+3000m(9'34)+2000m(6'22)+1000m(3'01)+800m(2'16)+400m×2(65")+200m×2(27")
4日 クロスカントリー90分
5日 30kmロード(1゜55'48")
6日 Jog
7日 30km走(1000m×5 400m×5 200m)
8日 砂丘50m上り 40分スピードプレー
9日 Jog
10日 クロスカントリー90分
11日 3000m(50mごとの断続走) Jog45分
12日 24.6kmロード
13日 北海道へ移動
14日 400m×15 55"4~65"0
15日 30kmロード 1゜42'42
16日 Jog70分
17日 2000m×3
18日 20000m 65'30
19日 Jog80分
20日 1万mレース 29'12"0
21日 クロスカントリー80分
22日 90分スピード
23日 タイムスマラソン 2位 2時間19分50秒
24日 Jog59分
25日 Jog100分
26日 16000m持続走 クロスカントリー30分
27日 1万mレース 28分52秒(日本新)
(朝練習を除く)

となっていました。

マラソンに関するムックは今でも新刊が発売されていますが、あまり専門的にすると、購買対象者が限定され売れ行きが落ち込むので、初心者の方も対象にした中身の薄い万人向けの本になってしまいがちですが、ムックでこれほど詳細かつ具体的な内容のものは見たのは初めてでした。
Amazonでは現在、古本が数冊販売されているようです。

シーズンオフの今(5~7月)の時期は、夏場の走り込みに向けたトレーニングの計画を練る準備期間であり、スピードトレーニングを重視する期間でもあります。特に猛暑の夏場は、時間や場所を限定して集中的に取り組まないと暑さでバテてしまうだけに、効率良く効果的なメニューが重要になってきます。
また、ダラケてしまいやすい夏場は、トレーニングのモチベーションを保つことも必要。
そういった目的に対して、この本はかなり役に立ちそうです。