2014/06/01

月間走行距離信仰

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ランニングを始め出した頃は、3km程度しか走れなかったのが、5km、10kmと長く走れるようになり、それを繰り返すことで、月の走行距離も長くなり、
「今月はこんなに走ったんだ。俺ってすげえ!」
と喜ぶものですが、大会などに出て自分のレベルを実感すると、その程度のランニングは当たり前のことに気付き、さらに頑張って練習しようとします。

月間100km、200kmとレベルが上がるにつれ、タイムも向上するのですが、そこそこのレベルまで到達すると、そこからなかなかレベルアップができないようになってしまいます。それでも頑張ろうとして、来月は250kmを目指すぞ!今月はあと15kmで300kmだ!400kmだ!と頑張るのですが、レベルは一向に上がらず。
これが距離信仰の罠。

月間走行距離を伸ばすには、負荷の低いジョグを毎日繰り返したり、多くの走行距離を稼げるのんびりロング走を週末に行えば、いとも簡単に距離は伸ばせますが、これではレースペースで走る力は付きません。
マラソンのためのスピードやスタミナを付けるには、高負荷なトレーニングが必要で、その疲労や足の損傷を回復させるために、軽いジョグや休息をしないといけないのですが、距離信仰が頭にあると、距離が短く負荷の高いスピード練習は避けるようになるし、休息効果でパワーアップできる超回復の期間なのに、無理して中途半端なジョグを繰り返し、月間走行距離を増やそうとしてしまうのですよね。疲労が抜けていない状態でも、ゆっくりのロング走なら頑張れるのですが、そのランニングでは脚力も心肺能力もレベルアップせず、時間とエネルギーを浪費しただけとなってしまいます。でも、走行距離は伸びます。
毎月500km走ったとしても、サブ3すら達成できないのは、トレーニングの質が悪いか、素質がない証拠となり、その500kmに価値はないどころか、無駄なランニングをしています宣言をしているようなものです。

マラソンの教本がいくつか出ていますが、「月間走行距離300kmを目指そう」「月350kmでサブ3を達成する方法」といった内容を解説している本があるでしょうか。
解説しているのは、トレーニング1本の距離やペース、種類、取り組む期間、調整方法、栄養、補強、休養、故障対策、レースでの注意点などの内容がほとんどで、タイム向上ではなく、トレーニングの走行距離を目標にしている本など、見たことがありません。

「走った距離は裏切らない」という、野口みずき選手の有名な言葉がありますが、これは、質の高いトレーニングを繰り返し行なった結果であって、今月は1000kmを目指そうと思いながらトレーニングしていたわけではないですよね。距離は結果であり目標ではないかと思います。

せっかく、中級レベルまで走力が上がったのに、いつまでも初心者の頃と同じ距離信仰を持ち続けているおかげで、穴埋めジョグやのんびりロング走を繰り返し、挙句の果てはトレーニングの一環である休足日をも減らすようなことをしてしまい、それでもなお、「今月は300kmまであとちょっと。頑張らないと」と感じているようでは、いつまで経っても上達できず、上級レベルの壁は乗り越えられないと思います。

マラソンは走った距離の長さを競う競技ではなく、定められた距離をいかに速く走るかを問う競技。マラソンのものさしは距離でなくタイムなんですよね。
タイムが速い走者に賞を与えるのは、大変な努力と、質の高い効率的なトレーニングを積み重ねないとそのタイムでは走れないからで、練習での走行距離が長いことに対して賞賛しているわけではありません。少ないトレーニングで好タイムを出せるランナーの方が、優秀だと思います。

勉強でも同じことで、子供が母親に「今日は2時間も勉強をしたよ!」「今日は3時間だよ!」と得意がっていても、テストの点や成績が悪ければ意味はなし。
普段、遊んでばかりいても、30分間集中して勉強をし、できなかった問題を解いたり、知らない言葉を覚えたりしながら成績を上げている子供の方が、優秀なのは言うまでもありません。
勉強時間と、ランニングの合計距離は似ていますよね。

いつまで経っても持ち続ける距離信仰。上達を阻んでいるのは、この考え方だと思います。

私もマラソン1年生の頃は、距離を意識してしまいがちだったのですが、ある程度のレベルになってからは、トレーニング内容を重視しようと、多くの本を読みあさり、それを参考にしつつ、自分なりのトレーニングを改良しながら積み重ねてきました。
そして、そのトレーニングは正解だった、距離を意識してトレーニングすることは間違いだったことを、自己ベストという形で結果に残すことができました。
更に上を目指すには、もっとトレーニングを研究し、効率良く鍛えないと、私の場合は年齢的なこともあるので、この先の壁はかなり厚いと実感しています。

楽しいランニング、気持ち良いランニングも実行しつつ、レベルアップのランニングをいかに効率良く行うか。
最近は、図書館の書庫で眠っていた古いマラソントレーニングの本(1989年出版)を引っ張りだしてもらい、それを読んで学んでいる最中です。
歴代のトップランナーの本もチェックしており、宇佐美彰朗氏や君原健二氏の本(すごく古くて昭和50年発行)も読んでいます。
新しい本は、初心者向けのランニングの本ばかりなので、こういった古い本は非常に参考になるものが多いようです。

いかに無駄なく効率良くトレーニングをするか。これは仕事でも同じことですよね。
例えば同じ成果の仕事をしたAさんとBさんがいるとして、Aさんはテキパキと仕事をこなして定時で上がり、休みは週休2日。方やBさんは、ダラダラ働いて残業もし、休日出勤もしています。どちらが優秀でしょうか?仕事なら余分に働いた方が残業代や休日出勤手当が付きますが、ランニングではそんな手当は付かず、時間とエネルギーの浪費になるだけ。
挙句の果てに、Bさんは月末になると「我ながら今月はたっぷり働いたなー」と悦に入っている始末。実際にそういった考え方のランナーさんはいるんですよね。

ランニングの目的が、ダイエットや健康維持だけや、サブ4やサブ3なんてどうでもいいこと、走れたらそれでいいや。といった方は別ですが、大会で満足の行く結果を残そう、誇れるタイムを作ろう、自己ベストを更新してレベルアップをしよう。そして、目標が達成した時の喜びを思う存分味わおうといったことが目的でランニングをされているのなら、月間走行距離に価値など見出さず、意義のある目的や目標に向かってトレーニングをする意識を持つべきですよね。